30人分の英作文をすべて添削して、全部の誤りに赤を入れて返す。おそらく英語教師のいちばん重い労働です。そして残念な事実ですが、この労働の学習効果は投入時間に見合いません。真っ赤な答案を受け取った生徒は点数だけ見てしまい、赤字を1つずつ検討する生徒はごく少数です。
ライティング指導の設計は、添削を軽くして、その分を書く前と書き直しに配分する方向で考えると、教師の負担と生徒の伸びが同時に改善します。
書く前が5割——型と材料を渡す
書けない生徒の大半は、英語力の前に「何をどの順で書くか」で止まっています。書く前に2つ渡します。
- 型(構成): 意見文なら「主張→理由2つ→まとめ」、紹介文なら「名前→説明2文→自分との関係」。型は制約ではなく足場です。慣れたら外せばいいだけで、最初から白紙で書かせるのは、設計図なしで家を建てさせるのに似ています。
- 材料(語彙と例文): そのテーマで使いそうな語のバンク、書き出しの1文の例。教科書本文がそのまま材料になる単元も多く、教科書本文の授業アイデアで扱っている「本文の型を借りて自分の内容で書く」は、書く前支援の代表格です。
毎日の下地としては、帯活動の3分クイックライト(お題について量だけを目標に書き続ける)が効きます。書く体力は書く量からしか生まれません。ここでは正確さを問わないのがポイントです(理由は誤り訂正の技術の流暢さ/正確さの原則と同じです)。
添削は観点を2つに絞る
全部に赤を入れない、と決めます。見るのは次の2つだけです。
- 今の単元の目標文法: 現在完了の単元なら have+過去分詞の形だけは全部拾う
- 意味が壊れる誤り: 読んで誤解する・伝わらない箇所
冠詞の抜け、スペルの揺れ、こなれない語順——伝わるなら今日は見送ります。「今回の添削は現在完了と意味の2つしか見ません」と生徒に予告しておくと、返却時に生徒が見るべき場所も定まります。
この割り切りに罪悪感を持つ必要はありません。1回で10種類の誤りを指摘するより、1回に1〜2種類を確実に直させて12回繰り返す方が、年間では多くを直せます。
直すのは生徒——記号フィードバック
赤で正解を書き込むと、生徒の仕事がなくなります。誤りの場所と種類だけ示して、直す作業を生徒に返します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 下線+T | 時制(Tense)を確認 |
| 下線+S | 主語と動詞の対応(三単現・単複) |
| 下線+W | 語(Word)の選び直し |
| ? | 意味が取れない。日本語で言いたいことをメモして再提出 |
記号は最初は2種類で十分です。返却→自分で直す→再提出の1サイクルを組み込むと、添削は「済んだこと」ではなく「次の作業の指示」になります。自分で直せた誤りの定着は、直してもらった誤りとは比較になりません。
ピアフィードバックは「ほめ+質問」の型で
生徒同士の読み合いは、設計しないと「間違い探し合戦」か「すごいね交換」のどちらかに落ちます。型を渡します。
- 良かったところを1つ、文を引用して言う(Good: I like your reason, "I can relax.")
- もっと知りたいことを1つ、質問の形で言う(Question: When do you play it?)
誤りの指摘はさせません。誤りを見るのは教師の仕事、内容に反応するのが読者の仕事、と分けるのがポイントです。書き手にとって「質問された」は「もう1文書ける材料をもらった」と同じで、そのまま書き直しの追加文になります。
1サイクルの全体像
書く前(型+材料)→ 書く(クイックライトで量、課題で質)→ 絞った添削 or 記号 → 自分で直して再提出 → 良い作品を教室で共有。ここまでで1サイクルです。全部を毎回やる必要はありませんが、添削で終わらせないことだけは守る価値があります。
定期テストでの英作文の出題と採点基準の作り方は最初の定期テストの作り方で、入試に向けた英作文の型は入試直前の英語指導で扱っています。翻訳アプリで書かれた宿題への向き合い方はAI翻訳時代の英語授業へ。
明日からの一歩
- 次の英作文の課題を出す前に、型と語彙バンクを1枚にして配る
- 添削の観点を2つ宣言してから集める
- 返却時に10分、「記号の箇所を自分で直す時間」を授業内に取る(宿題にすると戻ってきません)